トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
介護老人福祉施設「季館の四季」
2007年5月6日


 
  
 春告げ鳥の声に、咲きこぼれる花の影。蛍のかそけき光のあとは秋草にすだく虫の音。そして雪明かりと、季節の訪れのひとつひとつを情感豊かに伝えてくれる里山は、自然の宝庫でありオアシスだ。季館の周囲にはそのような里山が広がり、身近に自然の移ろいを感じさせてくれる。 
 春の訪れは泉ヶ岳の雪解け水が大地を潤し新しい命の息吹を与えるところから始まる。雑木林のなかでは猩々袴や春蘭が可憐な花を咲かせ、いたるところに小さい春を見つけることができる。日本の原風景ともいえるこのような世界を、石川啄木は愛したのだろう。 
  ふる里の春日の丘にかたくりの
      群れ咲くころのなつかしきかな 啄木 
    伊達政宗は桜の花をこよなく愛し、また夏を告げるホトトギスの声を聞くのを楽しみに、山野を散策したという。ここでは雉や山鳩そして狸やリスなどの元気な姿を見ることができる。夏は動植物が躍動する季節でもある。 
  待詫びてまどろむ程の暁に
        心ありけな初ほととぎす   政宗 
 秋は思索の季節、また自然の移ろいを情感豊かに感じる時でもある。この近くに山寺と呼ばれた名刹「山の寺洞雲寺」がある。かっては夕暮れ時ともなると聞こえてくる晩鐘にひとしをの感慨を誘われたことであろう。幕末から明治へと激しく移り変わる激動の時代を生きた仙台十三代藩主慶邦は、鐘や虫の音に語れぬ胸の内を歌に留めた。 
  山寺のかねのひびきも虫の音も
        ともに身にしむ秋の夕暮れ 慶邦 
 西方に独特の山容を見せる七ツ森。一番高い山が笹倉山である。四季折々変わる姿に郷愁を誘われることもある。この麓が歌人原阿佐緒の生誕地だ。 
  笹倉の秀嶺たまゆら明らみて
        時雨来たれば空に虹見ゆ 阿佐緒 
 里山を連想させる季館のなかは、優しい風に包まれている。絵や置物、調度品のひとつひとつに真心が感じられる。敬虔な祈りがそれらに込められているからだろう。里山と共生する季館は、何時もここに住んでいる人や訪れる人に、優しく微笑み語りかけるそんな場所であり続けるだろう。