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みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
東北大との企画展、江戸の遊び
2007年6月8日


 
  
   東北大学創立100周年/宮城県図書館創立125周年
   記念事業「江戸の遊び」を終えて
 現在,図書館を取り巻く状況は,財政状況を反映し大変厳しいものがある。このように状況が厳しければ厳しいほど,ますます図書館の果たす役割は大きいものと思われる。こういう時にこそ,職員一人ひとりが資質の向上を図り,中身の充実に努めることが大切である。
 宮城県図書館では「22世紀を牽引する叡智の杜づくり事業」を展開している。その中の一つの事業として,本館展示室を会場に特別展示会と企画展示会を開催している。特別展示会は,テーマに基づき本館所蔵の貴重書を展示するもので,積極的かつ果敢なチャレンジ精神に負うところが大きい。一方の企画展示会は,職員の自由な発案を生かし,創意工夫に満ちた展示会である。これらの展示会により,職員は相互に触発し切磋琢磨している。このことが学習的職場風土の醸成にもつながるものと思っている。
 11月3日文化の日,東北大学附属図書館と宮城県図書館の合同企画展の開場式が,厳粛かつ盛大に開催され記念すべき日となった。
 県図書館としては,本館を離れての企画展は初めてのことである。その意味からも,今回の企画展は,東北大学附属図書館と県図書館が,お互いに協力し合いながら行う初めての試みで,県図書館としても大きな刺激を受け,教わることが大変多かったと思う。
 ところで,日本人は農耕民族であったため,山河を敬い,真摯に山に向き合えば山も人に向き合い,岩に語りかければ岩もまた人に語りかけると信じられていた。大自然に限り無い畏敬や慈しみの念をいだき,大切にするすべを知っていた。そうした生活は,自然の移ろいや鳥の声,虫の声にも親しみをもち,その一つ一つの仕草にも心躍らせる豊かな感性を養うこととなった。
 江戸時代になると,その豊かな感性は日本の芸術や文化の分野にとどまらず,日常生活のいたるところにいきわたり,素晴らしい日本の文化の基層を形成し,大きく華開いくことになった。芸術・文化の担い手は,市井の人びとであり,彼らは和歌・歌舞伎・茶道・華道などの芸術や園芸・囲碁・将棋の娯楽の分野等においても活躍し,影響を与え高度に昇華させた。そして,江戸の人びとの暮らしを楽しく豊かなものにしたのである。
  今回の企画展のテーマは「江戸の遊び」−けっこう楽しいエコレジャー−であった。自然を大切にしながら,さらに素晴らしい文化を創造し興隆させていった江戸の人びとの多彩な姿を紹介することにより,現代を生きる私たちの生活や暮らし,環境との関わりについても示唆を与え,時宜に叶った内容であった。
 思えば,展示スタッフにとっては,度重なる合同打合せ会議,企画分野ごとの打合せ,資料の撮影,展示会場であるメディアテークにおける設営・撤去,記念講演会場の設営等々,本当に多忙であったとことと思う。もちろん,日常の業務を遂行しながらの企画展の仕事であり,それなりの苦労も多かったかと思う。
 しかし,その結果,東北大学附属図書館と県図書館に勤務する職員同士の交流と切磋琢磨によりモチベーションを高め,充実した内容の合同企画展示会となった。来場者からの評価の声は,なによりの証拠であり成果であった。
 また,県図書館のボランティアの方々は,会場案内やギャラリートークにも携わり,新たなボランティア業務を体験し,充実感を覚える絶好の機会にもなった。
 なによりも県民にとっては,東北大学附属図書館と県図書館が所蔵する文化的・学術的に価値の高い,貴重な知的財産ともいえる資料を身近なところでふれる機会に恵まれた。
 今後も,互いに積極的に交流・連携・協力し合い,合同企画展を継続・発展させながら,県図書館としては,職員の資質の向上を図り,質的機能をより一層高めていきたい。
  平成18年12月 宮城県図書館長 伊 達 宗 弘