宮城県図書館が進めている「22世紀を牽引する叡智の杜づくり」が、平成19年度文部科学省から最先端の取り組みと高く評価され、国のモデル事業になった。私が平成14年4月から取り組んできたこの事業が高く評価されたことは嬉しいことである。
この事業の趣旨は、いま私たちを取り巻く環境は大変殺伐とし、また先行き不透明な閉塞感が漂っている。こうしたなかで一番大切なことは、次代を担う人たちに自信と誇りをもって語れる日本やふるさとの歴史や文化をしっかりと伝えることではないだろうか。それがあってはじめて自信をもって生きることができ、また堂々と世界へ伍していくことが出来るのではないだろうか。
そんな思いから予算零で始めたこの事業も平成14年当時、国指定文化財が1件であったものがいまでは登録文化財も含めて、国・県指定が7,800点を越えた。これに合わせ文化財のレプリカを新たに作成するとともに既存の『源氏物語絵巻』『平家納経』『鳥獣戯画』『七夕草紙』『蒙古襲来』、『浮世絵』などを、高校の授業に貸出して直に手にとってもらいその素晴らしさを実感してもらっている。もちろん市町村の展示へも積極的に活用してもらい文化を通して地域の活性化へも貢献している。この事業を通して日本人の心の再生、地域の再生へも少しでも役だっていきたいと考えている。
国のモデル事業指定は、涙ぐましい図書館職員の献身的な努力の成果が高く評価されたのである。全県的な展開を図っていくが、白石市、松山高校、そして登米地域振興事務所との連携も考えている。登米市内の高校、図書館、そして登米合同庁舎でもこのモデル事業を積極的に展開し、壮大なスケールでこの事業を展開していきたいと考えている。
いまこそ図書館をはじめとする文化施設が連携し、次代を担う人たちのために積極的な大切な役割を果たしていく必要があるのではないだろうか。そうしなければこの国は早晩滅んでいくのではないだろうか。日本を滅ぼすのには大量破壊兵器などではなく、自分の国やふるさとに誇りも自信も感じなくなった日本人自身ではないかと私は危惧している。 宮城県図書館はそうした中で、全国へ向け「22世紀を牽引する叡智の杜づくり」を発進し、この崇高な理念に共鳴する多くの文化施設や、見識ある人々を大きな渦の中に巻き込んでいこうと考えているし、宮城県図書館にはその責務があると考えている。 |