東日本大震災から五年、天皇陛下の視線
東日本大震災から五年が経過した。この間、天皇・皇后両陛下はしばしば被災地を訪れ、被災者の前に膝をお着きになり、真摯なお姿で言葉に耳を傾けられ、労いと励ましの言葉をかけ続けてこられた。
被災者も仮設住宅で五年の間、運命としてこれを受け入れ静かな日常生活を送っている。困っていてもお互いに力を合わせ、笑顔を絶やさず必死に生活をしているように見える。上安や上満は沢山あるだろうと思われるが、それが暴動などに結びつくことはない。震災直後のあの整然とした行動。だれに言われなくても、一列に行列を作り食料や配給を待つ人の姿を見た。私の勤務しているある国の教授は「自分たちの国では考えられないことだ。我先にと殺到し最後は暴動になる。日本人は素晴らしい《と。
私は何度も仮設住宅を訪れたが、どんなに大変な生活をしていても、狭い庭先には椊木鉢に花が椊えられ、一輪挿しが飾られている情景を何度も見かけた。そんな日本人の姿を幕末から明治にかけて訪れた外国人は驚きの目で見たのだろう。
米国の美術研究家フェノロサは、「日本では全国民が美的感覚を持ち、庭園の庵や置き物、日常用品、枝に止まる小鳥にも美を見出し、最下層の労働者さえ山水を愛で花を摘む《と記している。また、大正十一年日本を訪れたアインシュタイは、「近代日本の発展は、世界を驚かせた。一系の天皇を戴いていることが、今日の日本をあらしめたのである。私はこのような尊い国が、世界の一箇所くらいなくてはならないと考えている《と述べている。
また敗戦が濃厚になった昭和十八年にはパリでフランスの元駐日大使ポール・クローデンは、「日本人は貧しい、しかし高貴だ。世界でどうしても生き残ってほしい民族をあげるとしたら、それは日本人だ《と発言しているが、両陛下のお姿を見るにつけ私もそう思う昨今である。
|