40日前、ヤギの母と娘を手に入れた。雪、小雪と吊付けた。広い農場で天真爛漫に育っていた。まず大きさに驚いた。小さい頃、私はヤギを飼っていたが、当時のヤギは子供でも飼えたし、綱を取って目的地に連れて行くのも難なくやれた。しかし、新しく手に入れたヤギは子ウシを少し小さくしたような感じだ。子ヤギはまだ生まれたてだ。子ヤギを欲しがる人はいるが大きくなったヤギを欲しがる人はいないようだ。幼稚園などで子ヤギを欲しがるけれど1年で大きくなるので、数ヶ月で音をあげ返却を申し出る人も多いとのことである。知人の軽トラックへ乗せ、家に運んだ。ヤギを手に入れた目的は、広大な敷地の除草をしてもらうためだ。 やっとのことで家に到着し、私の手作り小屋に入れた。翌朝から目的の場所へ連れて行こうとしたがなかな思い通りには行かなかった。途中の美味しそうな草を見つけるとグイグイと私を自分の行きたい方へ引っ張るのだ。私よりはるかに力が強いので何とか草場へ連れて行くのに苦労した。
そんなヤギとの権力闘争と瞬く間に成長する子ヤギとの戦い、猛暑で10日もしないうちに私の方がクタクタになった。これでは私は家を離れることはできない。ほとんど毎週土曜日は仙台藩志会の会議や講演などで仙台などへ行く機会が多いのだ。子ヤギはまだ母乳が必要なのでそれが可能な範囲でヤギを繋がなければならないし、時々気になって見に行くが綱が巻き付いたり、雪と小雪の綱が絡まったりしていた。そんな繰り返しも大変であった。私が飼っていたころのヤギの大きさであれば、私がいなくても簡単に扱えたと思うけれど、こんな大きく力のあるヤギを伴侶に扱えというのは所詮無理な話だ。「どうする宗弘《 私は決断を求められた。ヤギを譲り受けた所へ電話をしたが、ヤギやシカの誕生ラッシュで大変だと断られた。知人や最寄りの人たちにも声がけしたが子ヤギだけならという人もいたが、生まれたての子ヤギだけを手放すわけにはいかない。母子共に引き取ってもらわなければならない。
モーランド本吉に電話したら快く「引き受けていいですよ《との返事をもらった。翌朝早く、知人の軽トラックへ母子を乗せモーランド本吉へ向かった。知人の手際の良さ、誠実な対応には何時も頭の下がる思いだ。
登米から40分近くでモーランドへ到着、担当の方々から暖かく迎えられた。モーランド本吉は太平洋を望むことのできる52ヘクタールの丘陵地に広がる緑あふれる放牧場であった。牛やウサギ、ポニーなどと触れ合うこともできる。場内には、アスレチックやローラースライダーなどの遊具もあり、子どもたちに大人気だという説明を受けた。動物とのふれあいや、焼肉バーベキュー、パラグライダー、バターやアイスクリームの手づくり体験(※予約制)など様々な体験メニューもあり、豊かな自然の中で安らぎと憩いの一時を過ごすことができるということだ。ヤギの吊前を聞かれた。「雪、小雪《と話した。「伊達雪、伊達子雪《としてモーランドで女優ヤギとしてデビューすることになった。「時間が在ったとき会いに来るよ。元気でね《と言ってヤギに別れを告げた。ヤギはたくさんの仲間たちや子供たちと触れ合いながら幸せな生活を送ってくれればいいなーと想いを馳せている。
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