トップページへ仙台藩最後のお姫さまみちのくの文学風土
みちのくの和歌、遥かなりみちのくの指導者、凛たり武将歌人、伊達政宗
 
歌枕・俳枕を行くー山形2(山寺・朝日岳・大沼)
2003年11月18日


  
 山寺は、山形市内にある国指定の名勝史跡です。山寺は、860年(貞観2)慈覚大師が清和天皇の勅許を得て開いた宝珠山立石寺を中心し、全山が凝灰岩からなり、風水食された奇岩が四季折々の変化美を楽しませてくれます。山門から奥の院に通じる千余段の石段の両側には数多くの堂社・句碑・板碑が建ち並び、おびただしい塔婆が立てられています。『奥の細道』の旅の途次訪れた芭蕉は「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」と記しましたが、この句の蝉について斎藤茂吉はアブラゼミ説を、東北大学の小宮豊隆はニイニイゼミ説を主張し、両者は一歩も譲りませんでした。そこで茂吉は山寺にセミの声を聞きに来て、セミを採集してもらった結果、ニイニイゼミとわかり、兜を脱いだという逸話も残されています。
  夏山のトンネル出れば立石寺    高浜 虚子
  ほうたるの光とどかず立石寺    堀口 星眠
 大朝日岳は標高1870メートル、山形・新潟県境の南北80キロ、東西30キロの朝日連峰の主峰です。季節風の影響で東よりの積雪が多く、雪庇が東側にかかり、雪崩によって東側または南側の斜面が著しく急峻な岩壁となり、非対称の険しい山容となっています。磐梯朝日国立公園の一部になっており、豊富な高山植物群落やブナの原生林が残り、四季折々の変化美を楽しませてくれます。中世には朝日修験の霊場でした。朝日連峰北部の以東岳北部の大鳥池はタキタロウとよばれる幻の大きな魚がいると伝えられ、その正体をめぐって全国的に注目された場所です。
  西空の朝日岳に雪降りてこの国土に冬は来向ふ 結城哀草果
  雪迎へ眩しき出羽の白竜湖   永野 孫柳  
 大沼(西村山郡朝日町)は、「最上川舟唄」発祥の河港左沢より西南に13キロ、江戸時代の和漢古今にわたる事物を天・人・地の三部に分け図・漢名・和名などを挙げて漢文で解説した『和漢三才図絵』により、出羽の景勝地として全国に知られた神池です。いまから1300年前役小角が発見したと伝えられ、雨乞いの霊験あらたかな稲田の守護神として信仰を集め、江戸幕府が朱印状を下付してその所領を安堵されたと伝えられます。とくに、沼の北西岸の湿原が分離・浮遊する浮島は、日本66州になぞらえられてその国情が占われたり、信心・不信心や吉凶の有無によりその形を変えると信じられたといわれています。浮島稲荷大明神は名僧・文人が数多く訪れた森閑とした聖域でもありました。
  祈りつつ名をこそ頼め道の奧に沈めたまふな浮島の神
                         橘 為 仲
  浮島の花や六十六箇国     清 風