目を海岸に転じると、青森県八戸市鮫角から宮城県牡鹿半島に至る600キロの三陸海岸です。陸奥(青森)、陸中(岩手)、陸前(宮城)にまたがることから三陸の名前で親しまれてきました。大部分は岩手県に属しますが、海岸線は屈曲し、数多くの湾と岬が続くリアス式海岸として知られ、沖合いでは寒流と暖流が交わる、世界でも有数の漁場です。
青森の八戸、岩手県久慈・宮古・釜石・大船渡・宮城県気仙沼・女川など全国屈指の水揚高を誇る漁港が連続しています。また三陸沖は地震の多発地帯で、何度となく、大きな災害を被ってきました。
久慈海岸から気仙沼湾に至る海岸は陸中海岸国立公園に指定されていますが、北部陸中海岸の北山崎は、男性的なダイナミックな景観で、海のアルプスともいわれ、200メートルの大断崖が8キロにわたって垂直に海に落ち込んでいます。
太平洋の波が眼下の岩礁・洞門に打ち砕ける壮観な眺めは、旅人に最果ての一人旅の哀愁を掻き立ててやみません。黒崎の展望台からは、南は北山崎につづく豪壮な断崖風景、北は久慈の岬が手にとるように展開します。白砂青松の海岸も広がっています。
陸中海岸の中央にある浄土が浜は白色の半島に枝ぶりのよい松が緑に映え、極楽浄土を思わせる独特の雰囲気を醸し出しています。海水浴場としても知られていますが、近くには、映画「喜びも悲しみも幾年月」でおなじみのトドヶ崎灯台は宮古湾から見えます。
三陸の卯波デッキに転がりつ 黒沢 京子
岩手の湘南とよばれているのは、南陸中海岸の陸前高田市周辺です。ここはシュロ、ビワ、ザクロなど亜熱帯植物の茂る常春の地でもあります。なかでも高田松原は景勝地として海水浴場としても名高い場所です。
草臥れて即ち憩ふ松落葉 高浜 虚子
碁石海岸は、末崎半島の東南に位置する代表的な景勝地です。無数の小島、断崖、洞窟などが複雑に入り組み、黒松林は清澄な海水と相まって美しく輝いています。海岸の松林にはハイビャクシン、エゾスカシユリ、ハマギクなどが咲き乱れ、寒中でも椿の花が咲きます。むかしアイヌの酋長の首が流れ着いたとされる首崎もこの近くにあります。
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