秋田県内有数の豪雪地帯横手盆地は、東に奥羽山脈、西に出羽丘陵を望み、ほぼ中央を雄物川とこれに注ぐ玉川、横手川、皆瀬川などの多くの支流によりつくられたわが国を代表する大盆地で南北60キロ、東西15キロにおよび、有数の穀倉地帯です。北部の大曲市、中部の横手市、南部の湯沢市が中心都市で、この周囲には、角館、六郷などの古い町が点在しています。
横手は大曲とともに農業、商業で栄えかって佐竹藩の支城があったところです。古くから製材、酒造業なども盛んで、2月15、16日は雪深い特徴を生かした伝統行事かまくら祭が行なわれています。子供たちが集まり、雪の小山をくりぬいて室をつくり、水神様を祀ります。市内には、梵天奉納祭で知られる807年(大同2)坂上田村麻呂の勧請による旭岡山神社、戊辰戦争時庄内藩によって攻め落とされた横手城跡、後三年の役(1083〜87)のとき、源義家軍が清原家衡、武衡を打ち破った古戦場跡金沢柵跡、付近には義家が、雁が列を乱して飛び去るのをみて敵の待ち伏せを見破った立馬郊など、数多くの史跡が残っています。柵跡には、義家の戦勝を記念して建立されたと伝えられる金沢八幡宮があります。
大雪を見に大雪の国へ行く 山口 誓子
田沢湖は、火山活動のさい形成された火口が陥没し湖沼化したカルデラ湖で深度は423メートル日本で一番深く、透明度は33メートルと北海道の摩周湖につぐ高さした。これは流入する河川の少ないことと湖底の湧水によるもので、そのため湖は瑠璃色をし、周囲の山々の変化とともに四季それぞれに美しい湖面を映してくれます。不凍湖で、かっては、固有種であるクニマス漁が行なわれていましたが、1940(昭和15)玉川の電源開発のために強酸水が流入し、魚類は死に絶えました。さらに最近、急速に汚染が進んでいます。湖畔には、湖の主とされる辰子姫の金像が浮かんでいます。
真玉なす底の小石も数ふべく
魚のひれふる手にもとるべし 平福百穂
後の月硬し辰子姫象に 原田 青児
高尾山(川辺郡雄和町)は、秋田駅からバスで一時間ほどのところにある標高380メートルの山で、展望の優れた場所です。雄物川が足下で直角に曲がり、はるかに神宮寺嶽が聳え、仙北平野が広がっています。上流には出羽丘陵が、さらにその奥には奥羽脊梁山脈の峰々を望むことができます。北には、太平山、秋田平野、男鹿半島と存分にスケールの大きな大自然と対峙できる場所です。石井露月や38歳で急逝した秋田大学教授加賀谷一雄の句碑があります。
秋立つか雲の音聞け山の上 石井 露月
冬の河越す鳶脚を胸に抱き 加賀谷一雄
秋田・青森県境にまたがる白神山地は標高1250メートルの向白神岳、1235メートルの白神岳を中心に広がる1万7千ヘクタールの世界最大級のブナの原生林で、1993年(平成5)ユネスコ「世界遺産条約」の自然遺産リストに登録された貴重な大自然です。奥羽山脈から枝分かれする出羽山地の北端部に位置し、岩木川、赤石川、追良瀬川、笹内川など日本海に注ぐ河川の原流部になっています。クマゲラをはじめ植物の生態系や動物の遺伝子保存の場として学術的にも貴重な地域です。
白神の水堰き止めて馬冷す 岡田 貞二
白神の天よりこぼれ小鳥来る 小畑 晴子
雁帰る白神山に棹正し 柴田 良二
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