下北半島は、県東北部に斧形に突き出した本州最北端の半島で恐山、仏ヶ浦、尻屋崎、大間崎、風間浦、大湊などで知られています。
恐山は、下北半島の北部に位置する休火山で比叡山や高野山とともに日本三大霊場の1つとして知られています。全山の地蔵堂をまとめて菩提寺と称し、その中心をなすのが1000年前慈覚大師によって開かれた円通寺地蔵堂です。荒涼とした風景と相まって、「死者の集まる山」とされ、7月20日から24日にかけての恐山大祭では巫女による仏下ろし「いたこ」の口よせが行なわれる場所として知られています。周囲の山地には、旧南部藩の植栽によるヒバの美林が広がっています。
恐山上り上りてうちひらく
荒れたる土や湖につづきて 柴生田 稔
仏ヶ浦は、五百羅漢、十三仏、観音岩、天蓋岩など仏教名をつけられた名称からなる景勝地で、大町桂月は、「神のわざ鬼の手づくり仏宇陀の人の世ならぬ処なりけり」と詠んでいます。尻屋崎は北東端の岬で、アイヌ語で「絶壁のある港」を意味します。背後には標高20メートルの海食台が発達、海中には暗礁が多く、夏期の霧、冬期の暴風雪で海難事故も多いところです。岬の突端には、1876年(明治9)建立の灯台があり、岬背後の台地上には芝生や松林で覆われた砂丘があり、牛馬の放牧地として知られていますが、半野生馬は寒立馬として有名です。
砂止の棚も朽ちたり下北の
無人の浜にひびく夏潮 木俣 修
下北の首のあたりの炎暑かな 佐藤 鬼房
八戸は、県南東部の太平洋に面し、馬淵川と新井田川の河口に発達した町で、市内の町名には市が開かれたことにちなむものが数多く残されています。朔日町、三日町、八日町、十日町、十一日町、十三日町、十六日町、十八日町、廿三日町、廿六日町、廿八日町などがあります。「やませ」と呼ばれる季節風による凶作に悩まされた町です。近年は、有数の水産都市・工業都市として発展しています。ウミネコの繁殖地で知られる蕪島、名勝種差海岸等が知られています。
みちのくの八戸の菊いまぞ摘む 山口 青邨
十和田湖は日本で3番目に深い二重式カルデラ湖です。アイヌ語で「トーワタラ(岩の間の湖)」に由来するといわれます。十和田湖を「十渡沼」ともいいますが、これは十和田の主である八郎太郎が田沢湖の辰子姫のもとにしきりに通ったという伝説にもとづいたものです。奥入瀬渓流が流れ、近くには蔦温泉があります。木俣修は『呼べば谺』に「山の湖のゆふべの波の乱反射うけとめてさやぐ老いづく胸は」と詠い、水原秋桜子は「紅葉散る水は瀬となり滝と落つ」と句にとどめました。湖畔のおとめ像は時空を越えて私たちに何かほっとする温もりを与えてくれます。
花茨や十和田下りの一つ駅 河東碧梧桐
一舟を十和田に賃し秋惜む 大橋越央子
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